─ BIPROGYとの共創で2.5か月のプロトタイプ検証を経て、商工中金が内製開発・全国展開へ
概要
株式会社 商工組合中央金庫(以下、商工中金)では、多様な業務で専門知識が不可欠である一方、その知識やノウハウが個人に依存し、組織内で十分に共有・活用されにくいことが課題となっています。そこでDataRobotとBIPROGY社との共創により、専門知識の活用を支援するAIエージェントのプロトタイプをわずか2.5か月で開発し、ユーザーテストで一定の評価を獲得しました。2026年4月以降はプロトタイプを参考にしながらも、商工中金のAX担当者自らが、アプリの設計・機能・出力品質・プログラミング言語まで改めて設計し、内製で開発・実装を行いました。さらに、他のAI製品とのセキュアな接続に向けたSingle Tenant SaaS環境(顧客専有型のクラウド環境)の導入を経て、2026年9月にアプリケーション完成させ、全国の営業店での利用を開始しました。
課題 ─ 専門知識の属人化と、内製化への要請
商工中金では、多様な業務に専門知識が不可欠である一方、その知識や判断ノウハウが個人に依存し、組織内で十分に共有・活用されにくいという課題があります。これらの知識をAIによって組織的に活用するとともに、現場のニーズや業務環境の変化に応じて継続的に改善できるよう、外部に依存しすぎない内製開発力の獲得を目指しました。
ソリューション ─ DataRobotとBIPROGYによる共同開発
なぜDataRobotだったか
DataRobotが選ばれた理由は、ワンコマンドで実装が可能であり、専門的なエンジニアでなくても、研修さえ受ければビジネスユーザー自身が自社環境で高速に開発・運用できる点にありました。これは、内製化を目指す商工中金にとって、単なるツール導入ではなく「組織としての開発能力の獲得」という目的に直結する選定理由でした。
BIPROGYとの役割分担
BIPROGY社は、商工中金の基幹システムであるBankVisionをすでに導入しているパートナーです。本プロジェクトでは、DataRobotのFDE(フォワード・デプロイ・エンジニア)チームとBIPROGY社のエンジニアが連携し、プロジェクト全体をリード。DataRobot環境上での共同開発を進めながら、一部の実装をBIPROGY社が実装する体制を取りました。DataRobotが担うビジネスユーザー主導の高速開発をBIPROGYの技術的なサポートを受け、プロジェクトを推進しました。
開発体制とプロセス
開発は、DataRobotのFDEチームによるアジャイル体制で進行しました。企画・提案、要件定義、プロトタイプ開発、共創という4段階のマイルストーンを踏み、週次会議とフィードバックサイクルを通じて品質を高めていきました。並行して、内製化に向けたスキルトランスファーセッションを複数回実施し、プロンプトエンジニアリングやアプリ開発の研修を行いました。
セキュリティへの配慮
全国展開に向けた本番化の過程では、他のAI製品とも安全に接続できるよう、Single Tenant SaaS環境を導入しました。金融機関として求められるセキュリティ水準を維持し、要件を満たすように、複数のAI製品を組み合わせて活用できる体制を整備しました。
導入効果 ─ プロトタイプから全国展開へ
本プロジェクトは、プロトタイプ開発で終わらず、商工中金自らが再開発を設計・実装し、継続的な進展を遂げています。
- プロトタイプ開発とユーザーテスト:DataRobotがアジャイル開発によりプロトタイプを短期間で構築し、現場社員によるユーザーテストを実施。一定の評価を獲得
- 本番アプリの内製開発:検証で得られた知見を参考にしつつ、商工中金のAX担当者が全国利用を前提としたアプリ設計・機能要件・UI・出力制御などまで再設計し、2週間程度で内製開発。その後も機能改修や品質改善をアジャイルで進め、全国の拠点で利用が可能な品質のアプリケーションを実装
- セキュリティ基盤の強化:他のAI製品ともセキュアに接続できるよう、Single Tenant SaaS環境を導入
- 全国展開:2026年9月より全国の拠点へと展開
スキルトランスファーをきっかけに、商工中金の担当者はアジャイル開発の理解を深めただけでなく、採用したアーキテクチャを選んだ理由の説明を自ら行えるようになり、その結果、内製開発の機運が高まり、今回のプロジェクトで得たスキルを他のアプリケーション開発にも応用し始めています。
お客様の声
本プロジェクトを通し、商工中金 デジタル戦略部 インテリジェンス室 AXグループの久保 潤氏は次のように述べています。
「DataRobotの強みは、開発から利用者への共有、フィードバックを踏まえた改修まで、一連のPDCAサイクルを高速に回せる点にあります。UIを含むアプリケーションを迅速に開発し、ビジネスユーザーに共有したうえで、実際の利用を通じて得られた意見を継続的な改善につなげることができます。こうしたアジャイルな開発体制により、短期間で全国の職員が利用できるアプリケーションを開発することができました。
商工中金では積極的にAXを推進しており、2026年3月には『長期戦略・変革プラン』を公表し、中小企業を支える『プロデューサー』として自らも変革しています。今回の取り組みに止まることなく、お客様の満足度向上につながる様々なAI活用の取り組みを加速させています」
本プロジェクトのまとめと今後の展望
本プロジェクトは、エージェント型AIの活用を通した暗黙知の形式知化により、重点業務そのもののプロセス変革を目指すAX(AI Transformation)の実例です。
このアプローチは、特定の専門業務にとどまらず、幅広い業務への応用が見込まれています。商工中金における今回の取り組みは、DataRobotが目指すエンタープライズレベルのエージェント型AI事例となります。