検証は終わった。次は本番に載せる番
この1年、多くの企業がAIエージェントを試しました。デモは動き、社内発表も盛り上がります。しかしそこから先に進めない。データ連携、権限設計、既存システムとの接続、運用設計——最後の一歩に必要なのは、追加の検証ではなく現場に踏み込む実装力です。
日本のAIプロジェクトの多くが実運用に届かないまま止まっている——この課題認識から、DataRobotは2026年7月、日本市場向けにFDE(フォワードデプロイドエンジニア)チームを新設しました。
FDEとは、お客様の現場で最後までやり切るエンジニアである
フォワードデプロイドエンジニアは、製品を届けて終わりにしません。お客様のオフィスに入り、実業務の言葉で課題を理解し、その場でコードを書き、本番環境まで持っていく。ベンダーの技術者でありながら、お客様チームの一員として動く職種です。
従来の分業では、この役割は3つに分かれていました。課題を聞く人、提案書を書く人、実装する人。伝言のたびに解像度が落ち、「現場が本当に困っていること」が要件定義書に着地するまでに熱量は失われます。
FDEはその分断をなくします。課題を聞く人が、提案書を書く人であり実装する人です。だから初日から仮説を実装で検証でき、間違っていればその日のうちに方向を変えられます。
DataRobotのFDEには、さらに2つの武器があります。ひとつは、エージェントの構築・デプロイ・監視・ガバナンスを備えたプラットフォームを土台に使えること。ゼロから作らないぶん、業務ロジックに時間を割けます。もうひとつは、予測モデルとエージェントを組み合わせられること。需要予測や異常検知といった「数字を出す」機能をエージェントのツールとして組み込めるのは、エージェント単体では届かない領域です。
社内から始まったTech Summit
FDEの働き方は、説明を聞いても腹に落ちにくいものです。だからDataRobotは、まず自分たちで体験することにしました。それがTech Summitです。Tech Summitは、DataRobotのエンジニアが世界中から集まり、数日間で実際に動くAIエージェントを作り上げる集中開発イベントです。
これまでに世界で3回開催されました。第1回の舞台は米国ダラス。日本を含む各国から集まったエンジニアが混成チームを組み、朝から晩まで手を動かす。このイベントには、ひとつ厳しいルールがあります。最終発表で使えるスライドは2枚だけ。ユースケースの紹介と、アーキテクチャ図。残りの時間はすべて、動くエージェントアプリそのものを見せます。資料を作り込む余地がないので、全員の時間が実装に向く。見る側も、絵ではなく挙動で判断せざるを得ません。

この最初のTech Summitから持ち帰ることができた財産は、作ったエージェント自体に加え、そこに至る進め方でした。
そして日本へ
ダラスから戻った後、日本からの参加者がグローバルメンバーとともにオーガナイザーに回り、日本での開催を実現しました。
確かめたかったのは、この形式が日本の仕事の進め方でも機能するのか、という点です。結論から言えば、機能しました。むしろ日本のほうが効果が出やすい面すらありました。
理由は3つあります。第一に、日本の現場は業務知識の解像度が高い。「その処理は例外が多くて自動化できない」という指摘が具体的なので、設計がすぐ現実的になります。第二に、合意形成に時間をかける文化のなかでも、動く実機があることで議論が一気に短縮されます。100ページの資料より、画面が動く3分のほうが速い。第三に、同じ部屋で一緒に作った経験が、そのまま推進体制になります。
日本開催で生まれた成果のひとつが、銀行のATM現金最適化プランニングエージェントです。取引データと需要予測をもとに現金の補充・配送計画を組み立て、最適ルートを提示します。もうひとつは製鉄所の冷間タンデム圧延機を対象としたメンテナンス介入エージェント。異常検知の後に人が悩んでいた「次に何をするか」を、過去の履歴と在庫情報から根拠つきで提案します。いずれも現場の複雑さがそのまま難しさになる領域ですが、数日間で動くところまで到達しました。


日本チームは、製品の意思決定の近くにいる
この話をすると、「本社のイベントに日本も呼んでもらえたのですね」と受け取られることがあります。実態は違います。参加者として行き、組織する側になって持ち帰った。この距離感こそ、DataRobot Japanの一番の強みだと思っています。
外資系ベンダーの日本法人は、本社が決めた製品を売る役割に収まりがちです。日本固有の要望は吸い上げられても、ロードマップに載るかは分からない。現場のエンジニアが製品開発の議論に直接入ることは、まずありません。
DataRobot JapanのFDEは違います。製品チームやグローバルのエンジニアと日常的に議論しています。商談で見えた課題、実装中に当たった制約、日本の業務要件から来る仕様の要望を、その場で本国に伝えられる。時差はありますが、届くまでの階層はありません。仕様の判断に迷えば設計した本人に聞けるし、日本の要件から生まれた改善が製品に入ることもある。こうしたやりとりの往復が動いているかどうかで、導入の速度は変わります。
Tech Summitのような場を日米の両方でやっているのも、この関係を維持するためです。同じ部屋で数日間コードを書いた相手には、後から遠慮なく質問を投げられる。人の行き来が、技術の行き来を作ります。外資系ベンダーとしては珍しいほど日本市場に投資している——日本のFDEチーム新設も、その延長線上にあります。
お客様とやる2日間へ
社内で3回積み上げた知見を、私たちはお客様向けのプログラムとして整えました。それが「Tech Summit」です。位置づけは明確で、3ヶ月の本格的なFDE開発を2日間に凝縮したリハーサルです。
従来型のPoCは数週間から数ヶ月かけ、資料と議論が中心になりがちで、現場の熱量が生まれにくい。かといって、いきなり3ヶ月の本開発に踏み切るのはリスクが大きい。Tech Summitはその間を埋め、2日間で価値を証明して本開発のスタートラインへ手戻りなく接続します。
鍵を握るのは、開催前の3週間です。導入効果の高いテーマを絞り込み、アーキテクチャと活動体制を一緒に設計し、環境構築とデータ準備まで終えておく。セキュリティや物理的な制約で実データが使えない場合は、アーキテクチャに沿った合成データをこちらで用意します。データが揃わないことは、着手しない理由になりません。

当日はお客様の業務スペシャリストとエンジニア、DataRobotのPM兼エンジニアが1つのチームになります。データサイエンティストは必要に応じて加わり、予測モデルの開発からエージェントへの組み込みまでを担当します。お客様のエンジニアが入ると効果は大きく変わります。LLMと協働する開発を、その手で体験してもらえるからです。テーマと人数が揃えば、2チームでの並行開催もできます。
そしてDay 2の最終1時間では、成果のデモ、業務削減インパクトの提示、適合性の評価、本開発に向けたロードマップ合意までを、経営層の前で一気に終えます。スライド2枚のルールもそのまま持ち込み、お客様の業務スペシャリストが自ら登壇して、動くエージェントを操作しながら説明します。作った本人が語る言葉は、代理では出せません。
エグゼクティブにはキックオフ、初日夕方の中間報告、最終発表会の3点で入っていただきます。お客様のオフィスで開催するのは、役員がフラッと立ち寄って現場の熱気を直接感じられるからです。
単なる開発代行ではなく、技術移転でもある
Tech Summitで最も大切にしているのは、成果物ではなく「考え方の伝承」です。AIコーディングをどう使うか。ビジネス課題をAI課題にどう翻訳するか。どこで割り切り、どこは妥協しないか。こうした判断の勘所は資料では伝わらず、隣に座って一緒に手を動かすなかでしか渡せません。
共同開発から伴走支援へ、そして自走へ。お客様が主体となって推進できる状態を作ることが、FDEにとってのゴールです。私たちがいなくても回るようになった時点で、その仕事は成功しています。
2日間から始めませんか
AIエージェントの導入で本当に難しいのは、技術の選定ではありません。組織を動かし、本番に載せ、使い続けてもらうことです。だからDataRobotは、現場に入り込むFDEというチームを日本に置きました。そして日本のチームは、製品を作っている人たちのすぐ隣にいます。
その働き方を、まず2日間で体験してみてください。動く実機と、次の一手が明確になったチームが手元に残ります。Tech Summitの実施やFDEの取り組みについては、DataRobotの担当者までお問い合わせください。