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イベントレポート(1):顧客価値創業企業として変革するヤンマー。DXをどう推進し定着させているのか。

2023/08/14
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2023年6月14日、DataRobotが主催したイベント「バリュー・ドリブンAIの道はここから始まる」で、DataRobotからは生成AIのビジネス活用と可能性と題して、ChatGPT等の生成AIがビジネスに活用されつつある今、DataRobotの提供するバリュードリブン・AIと生成AIを活用することでビジネスでのAI活用に変化が生まれてきていることを紹介した。

ゲストキーノートにはヤンマーホールディングス株式会社 取締役/CDO 奥山 博史 氏が登壇し、「現場主導でお客様価値創造につなげるデータ分析・活用を」と題する講演を行った。本レポートでは、ヤンマーが取り組むデジタル戦略について紹介する。

■中期経営計画に合わせたデジタル戦略を推進する

創業111年を迎えるヤンマーホールディングス株式会社。ディーゼルエンジンの販売を祖業にし、1933年にディーゼルエンジンの小型化に成功。その後も、様々な世界初の製品を生み出し、現在ではディーゼルエンジンに加え、農業機械、建設機械、マリン関連、エネルギーシステムなどの分野で研究開発、製造、販売を行っている。

ヤンマーの中期経営計画の戦略課題のうちの一つが、デジタル基盤を整え次世代の経営基盤を作ること。そして、もう一つがこれまでの機械を販売する会社というイメージから脱却し、顧客価値創造企業に変革することだ。

さらに人材育成の方針として「HANASAKA(はなさか)」の推進を掲げている。これは、いろいろな分野の従業員が、それぞれ新しいことにチャレンジし、成長するとともに、新しい価値を作り出すこと、それを会社が全面的にバックアップすることで、花を咲かせようという考え方だ。

「会社としての全体戦略を踏まえて、デジタルという文脈においても、デジタルを駆使しないと実現できない新しい価値をお客様に届けることを最大の目標としています。そして、データに基づいた意思決定ができるような基盤やプロセス、文化を合わせて変革していくことを目指しています」

この目的の達成のために、ステップ1「スケーラブルな展開を可能とするデジタル基盤構築」、ステップ2「デジタルサービスの提供や効率性の向上による既存オペレーションの最適化」、ステップ3「デジタルを通じて新しい付加価値をお客様に届ける」ことを段階的ではなく、同時に進めていくという。

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このような方針において、次の4つを今後3−4年間で実現していく。

  1. インフラの整備とセキュリティの強化
  2. グループ全体のデータ基盤の再構築、システムの刷新によるモダナイゼーション
  3. 草の根DX活動を組織化する
  4. データ活用・分析をする

「3つ目については、デジタルに興味があって、自主開発しているような従業員を見つけて声をかけ、コミュニティに参加してもらいます。グループ全体でコミュニティを盛り上げ、参加者を集中的に教育していきます。そこで成果の出るユースケースを作り、関心の薄い人たちに紹介することで『自分たちもやらないと』と意識を変えていくことができます。他社の成功事例はピンとこなくても、隣の事業部の事例は自分ごととして受け止められます。消極的な人でも、お客様に価値を提供したい、業務を効率化したいという思いは同じなので、デジタルを使えばそれができるということをしっかりと伝えていくことが重要です」

■収集したデータを活用し、これまでにない価値を提供する

ヤンマーでは、業務分野ごとに様々なデータを収集している。そのデータを組み合わせることで、お客様に価値として提供できるアウトプットが生まれる。例えば、農業機械が田植えや収穫の最中に壊れると、農作業の時期を逃してしまうなど、大きな問題が生じる。そこで、機械の振動データなどを活用して故障を予測して、機械が壊れる前に問題の部品を修理できれば、顧客への新たな価値となる。

他にも、葉っぱの色などのデータから土壌の性質を予測して、例えば窒素分が足りない、リンが足りないことがわかれば、その予測結果をトラクターに連携して、土壌に合わせた施肥ができるように最適化できる。

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「機械販売だけではなく、農作業そのものに貢献できるようになりたいと考えています。データ分析によって最適な手法を提案できれば、収穫量の増加、肥料最適化による消費量の削減など新たな価値を届けられるようになります。加えて、我々のデータを農家が使う他のシステムに提供することで、貢献できることもあります」

■PoCに移る前に、アイデアを精査し、選定する

前述したように、同社ではデジタルに興味がある人を組織化し、コミュニティを作っている。現在は500人ほどがコミュニティに参加しており、データ活用のアイデアを募っている。同社では2022年よりDataRobotを導入し、データ活用・AI活用を進めているが、まずはDataRobot社と連携した勉強会を開催し、どんなデータがあればアイデアを実現できるかを考え、「テーマ創出アイデアシート」を使って応募する。2022年後半からこの流れでアイデアを募集し、集まったアイデアから、データがあるもの、ビジネスのインパクトが大きいものなどを選定してPoCを行う。現在すでに7つのPoCが始まっており、うち2つが現場での実装に近いところまでできている。

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「テーマ出しをするといろいろなアイデアが出てくるので、分類することが重要です。例えば、自動機械学習で解ける問題もあれば、モデルを自分で構築する必要があるもの、AIを使わなくても市販のSaaSで対応できるものもあります。今年度もすでに同じ取り組みを通して10個くらいのPoCが出てきています」

この取り組みを通して、筋の良い分析テーマが多く出るようになってきて、奥山氏は全社に浸透しつつあることを実感するという。

■現場、経営陣とのコミュニケーションと、バランス調整が必要

ヤンマーの取り組みのまとめとして、次の3つがあげられた。

「1つ目は現場。特に重要なのは、現場の責任者です。PoCを実施したけど、その後全然プロセスにのらないということがありますが、その多くが現場の責任者を巻き込めていません。

例えば、生産部の人から、工場の設備Aが壊れるので故障を予測したいというアイデアがありました。そこで、その人の上司である課長も交えて議論したところ、経営視点で見ると設備Aよりも、Bの故障のほうがラインへの影響が大きいという話がありました。こうした議論を積み重ねることで、現場の人も経営インパクトが大きいテーマを見つけ出すことができますし、改善案を出した課長にとってもプロジェクトが自分事となるので、その後の展開がうまくいきます。 反対に責任者が関わらないと、PoCが終わって効果を説明しても、押し付けになってしまうので理解が得られません。実装に至らず現場のプロセスに落ちていかないということになります」

加えて、現場とのコミュニケーションも重視している。月に1回DXに関するメッセージをヤンマーグループ社員全員が見れるデジタルのポータルサイトに上げるほか、そのポータルサイトに、現場で実施しているプロジェクトを紹介して周知するようにしているという。他に、現場報告会と称して、奥山氏自身が現場に行って、取り組み内容や成果を動画で紹介して、全体に訴求するようにしている。

2つ目が、経営陣とのコミュニケーションだ。ヤンマーグループ全体で月に1回、幹部約60人が集まる月次会議があるので、奥山氏は毎回約15分ほど、デジタルについての取り組みや現場での成果を報告している。事業部長クラスになると、現場のDXの成果について知る機会が少ないので、奥山氏が取り組みを報告することで、デジタルのマインドシェアを高めている。経営幹部のマインドシェアがあがると、中間管理層へのプレッシャーにもなる。また、奥山氏は事業部や地域のトップと定期的に会議して、現場の実践を紹介したり、表彰するような取り組みを行っている。

3つ目が文化醸成だ。一足飛びには文化は変えられないが、デジタルに興味がある人を集中的にサポートして活性化させ、ユースケースを作り横展開していく形でデータドリブン文化の醸成を図っている。

「ただし一つ成功しても、全体が変わるわけではないので、全体がどう関連しているのかを見極めて、コーディネートして、よりよいバランスを見つけ出すことが必要です。組織の反応をみながら、一つの取り組みでやり過ぎであれば調整して他のアイデアに力を入れるなど、全体のコーディネートをするのがCDOの役割です」

最後に今年度の目標や取り組みについて紹介した。

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「今年度の目標は、コミュニティに参加する部門数、人数をさらに拡大していくことです。具体的には、本社だけではなく、事業部、現場で、分析して課題解決できる人を100人以上にしたい。自分で企画をして、分析、実装できる人を育てたいです。

もう一つは、現場発だとビジネスモデルそのものを変えるような提案がでにくいので、もう少しトップを巻き込んで経営インパクトが大きいテーマを発掘したいです。そして、AI活用のコミュニティを活性化して、自発的なテーマ創出をしていきたいです」

奥山氏は、「現状は完成形ではなく、日々試行錯誤しながら改善しているところ」と述べ、講演を締めくくった。

執筆者について
DataRobot

AIドリブンな組織を実現
エンタープライズAIのリーダーであり、今日のインテリジェンス革命でしのぎを削っているグローバル企業に、信頼性の高いAIテクノロジーとイネーブルメントサービスを提供しています。DataRobotのエンタープライズAIプラットフォームは、AIを大規模に実現し、長期に渡ってパフォーマンスを最適化し続けることによって、ビジネス価値を最大限に高めます。

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