リリース 7.2 で進化した DataRobot AI Cloud の新機能​

2021/11/01
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(このブログポストは Advancing AI Cloud with Release 7.2 の和訳です)

数多くの事例が示すように、AI に対する需要はあらゆる業界で非常に高まっています。AI ドリブン組織への道は、もはや避けては通れません。このように AI が積極的なペースで進展していく中で、機械学習を利用したソリューションは急速にニューノーマルになりつつあります。現代社会の要求に応えるには、評価を迅速に実施し、効果的にコラボレーションを行い、あらゆる組織や個人にプラスの価値をもたらす必要があります。

しかし、現実には、AI を導入しても、期待通りの効果が得られないことがよくあります。Algorithmia 社が近日発表するレポートによると、87% の組織がデプロイサイクルの長さに悩まされています。また、評価段階を乗り越えた組織でも、導入に成功して価値を実現するまでには通常​18 か月以上かかっています。

AI に対する需要と、AI による価値実現に要する時間とのギャップは、明らかに受け入れられるものではありません。では、組織が AI でより早く成功するのを妨げているものは何でしょうか。

DataRobot は数百ものお客様と何千もの個人の方々に、まさにこの質問を投げかけました。その回答は以下のとおりですが、皆様にも当てはまるのではないでしょうか。

  1. 多種多様なスキル、ツール、チーム。技術的なスキル、専門知識、使用しているツールが非常に多様であるため、全社的に AI プロジェクトに取り組むのは容易ではないことがよくあります。データサイエンティストとデータエンジニアは、機械学習ソリューションのあらゆる側面を完全にコントロールしたいと考えているため、お気に入りのライブラリや言語を使用できるようなコーディング用のインターフェイスを求めています。その一方で、ビジネスアナリストやデータアナリストは、自動化されたベストプラクティスが使われる直感的なポイントアンドクリック型のツールを利用したいと考えています。このようにツールとスキルが多様であるため、チームとしての作業やコラボレーションが困難になる場面が多くあります。
  2. ​今日は正確でも明日には不正確になるモデル。現実世界で予想外の状況が発生すると、本番環境でモデルの精度がすぐに低下することがよくあります。そのため、モデルの精度や性能は、開発時に十分注意していても、デプロイ後は十分でなくなることが少なくありません。
  3. 実稼働モデルの公平性と倫理性を保つという課題。組織は、自分たちのモデルが公平であり、その状態を維持することを望んでいます。しかし、バイアスが隠された不公平なモデルを使用し、保護の対象であるグループを不当に差別していた組織の例は数多くあります。また、開発時にはバイアスがないかテストされたモデルでも、本番環境で稼働させるとバイアスがかかる可能性があります。​
  4. 予測と意思決定の不明確な関係。​AI モデルが生成する予測と、アクションを起こすために必要となる最終的な意思決定にはギャップがあります。たとえば、ローン申請者が債務不履行に陥る可能性が 25% あると判断された場合、その申請を承認すべきでしょうか、それとも却下すべきでしょうか。​
  5. AI プロジェクトを数件実施しただけで満足するのではなく、現場レベルで AI を活用した意思決定を、社内のどの部門でもできるようにする。​最初の AI モデルのデプロイに成功したとします。では、次に何をすればいいのでしょうか。既存のお客様や検討中のお客様の多くは、自身にどのような知識が不足しているのかを把握できていません。このため、マーケティング、商品開発、サプライチェーンや業務全体で AI を活用する方法について、専門知識やアドバイスを必要としています。

DataRobot はこうした問題を念頭に置き、DataRobot リリース 7.2 で​ DataRobot AI Cloud を進化させ、上記を含む多くの問題に対処できるよう努力を重ねてきました。それではもっと詳しく見ていきましょう。​

適切なツールを適切なユーザーに提供

AI を活用したソリューションの開発と品質を向上させるには、全社的な連携と協力が必要です。データサイエンティスト、データエンジニア、ビジネスアナリスト、データアナリストといった各分野のエキスパート全員が、共通のプロジェクトで協力し、成功し続けなければなりません。リリース 7.2 では、コーディングのエキスパートに焦点を当て、ポイントしてクリックするだけの操作を好むアナリストなどのユーザーとの共同作業をより効果的に行うことができます。

Composable ML を使用すると、経験豊富なデータサイエンティストは、自身の専門知識とカスタムコードを駆使して DataRobot の Automated Machine Learning(AutoML)ブループリントを拡張できます。Composable ML は DataRobot のブループリントを再利用可能な基本要素に変換します。これにより、日常的なコーディング作業に要する時間を短縮し、データの実験や高度なアルゴリズムなど、価値の高いデータサイエンス活動に、より多くの時間を割くことができます。
注)本機能はプレビュー版

新しい DataRobot パイプライン​​機能(英語)を使用すれば、データを準備し、お気に入りのコーディング言語を使って高度なデータパイプラインを迅速に構築、オーケストレーションすることが可能になります。
注)本機能はプレビュー版

​DataRobot は、この度の ​Zepl​ 社の買収により、クラウドホスト型のノートブックソリューションを統合しました。DataRobot ノートブック を使えば、コーディングを好むデータサイエンティストなどのエキスパートユーザーが、連携や安全性の面で優れている使い慣れたノートブック環境で、自分の好きな言語を使ってデータを探索したり、新しいモデリングタスクを作成したりできます。

実稼働モデルの品質と信頼性の維持

今日の不安定かつ不確実な世界の中で、機械学習モデルは文字通り一夜にして機能しなくなる可能性があります。トレーニングデータでは見られなかった新しい条件が発生すると、モデルの精度や信頼性が失われます。さらに、モデルの監視やライフサイクル管理プロセスのほとんどが、依然として手作業であり、複雑で時間がかかっています。

​​DataRobot リリース 7.2 から​ Continuous AI​​ 機能が​ MLOps​ 製品に導入されました。Continuous AI​​ (英語) を使用すると、任意の実稼働モデルに対して複数の再トレーニングポリシーを自動的に作成できます。注)本機能はプレビュー版。作成した再トレーニングポリシーは、選択したスケジュールに基づいて適用することも、データドリフトなどのイベントをトリガーにして適用することも可能です。また、Continuous AI では、DataRobot が世界に誇る AutoML 機能を活用して、新たな​​チャレンジャーモデル​を自動的に生成し、推奨します。

バイアス監視​​もリリース 7.2 の MLOps​​ に追加された新機能です。バイアス監視 (英語)を活用すれば、モデルに含まれる年齢や性別などの機密性の高い特徴量を監視し、バイアスが発生した際にそれを把握できます。バイアスが検出された場合、MLOps はその原因の診断に役立つインタラクティブな可視化機能も提供します。
注)本機能はプレビュー版

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複雑な意思決定ロジックを自動化する新しいフロー

予測とは、何かが起こる可能性を示すものであり、どのような意思決定を下すべきかを示すものではありません。予測という枠を超えるには、意思決定ロジックを自動化するルールを作成する必要があります。

DataRobot 7.2 では、この課題に対処するために、​ディシジョンインテリジェンスフローを導入しました。この度の​ Decision.ai​ 社の買収によって実現したディシジョンインテリジェンスフローを使用すると、複雑なビジネスロジックを用いてルールを構築し、意思決定や期待する成果を導き出すことができます。新しいディシジョンフローエディターでは、高度なルールをすばやく作成して、予測の後処理や意思決定の自動化を行うことができます。定義したルールは API エンドポイントを介して簡単に運用できるため、リアルタイムまたはバッチでの意思決定が可能になります。また、ディシジョンインテリジェンスフローでは、作成したすべてのルールの履歴全体が視覚的に表示されるため、すべての意思決定を信頼するうえで必要な透明性を確保できます。
​注)本機能はプレビュー版

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AI プロジェクトをスケールアップするソリューションアクセラレーター

Pathfinder ソリューションアクセラレーター​​では、使用例を見ながら AI を探索できます。具体的には、一般的な AI ユースケースのライブラリ、さまざまなサンプルツール、価値を迅速に生み出すための連携機能を提供します。Pathfinder ソリューションアクセラレーターでは、AI マーケットプレイスのように、最も人気のある AI ユースケースを簡単に見つけてプレビューし、すぐに使い始めることができます。数回クリックするだけで、理論から DataRobot の世界トップレベルの AI プラットフォーム上で自分のモデルをトレーニングするまでを、完全にシームレスかつガイド付きで体験できます。PathFinderは日本語にも対応しておりますが、今回改たに利用可能になったソリューションアクセラレーターは順次日本語対応を進めてまいります。

その他の機能

​以下を始めとして、​AI 活用の成功に寄与貢献する画期的な新機能を約 100 個​​用意しています。

  • その他

新機能および強化機能の一覧については、DataRobot ドキュメントのリリースセンターをご覧ください。​

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AI Experience Virtual Conference 2021

DataRobot 基調講演では、これまでのAIとは異なり、本質的なインパクトを与えるAI Cloudのエキサイティングなビジョンをご紹介

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執筆者について
Richard Tomlinson(リチャード・トムリンソン)
Richard Tomlinson(リチャード・トムリンソン)

プロダクトマーケティングディレクター

プロダクト、マーケティング、セールスの各チームと密接に連携し、DataRobot AIプラットフォームにおいてデータ管理およびデータエンジニアリングの各機能の導入と活用を推進。データウェアハウス、BI、アナリティクスの分野で20年以上の経験を有し、直近の8年間はHadoopおよびクラウドプラットフォームに注力。シカゴを拠点にしているが、イギリス出身で、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで統計学の学位を取得。

Richard Tomlinson(リチャード・トムリンソン) についてもっとくわしく