DataRobotのRAG構築機能を活用し、実運用可能性の高いアプリの作成を目指す
DataRobotは、日東電工株式会社(以下、Nitto)の実ビジネスにおける業務改善に向けた生成AIソリューションの導入支援を開始しました。NittoではDataRobot 生成AIソリューションのPoV(Proof of Value:価値実証)を2024年6月に完了しており、今後、DataRobotのRAG構築機能を活用し、継続的に信頼性の高いアプリ構築を目指します。
生成AIソリューション導入の目的と課題
Nittoは、実ビジネスにおける業務改善の取り組みとして生成AIソリューションの導入・検討を開始しました。この取り組みは業務プロセスを大きく改善させる可能性を秘めていますが、同時にいくつかの課題に直面していました。
・信頼性:LLMは、偏見や不正確な情報を含む可能性があり、そのままアプリケーションに組み込むと、倫理的な問題やビジネスリスクに繋がる可能性があります。
・効率性:生成AIアプリケーション(LLM Apps)開発には、高度な専門知識と時間が必要であり、多くの企業にとって大きな負担となっていました。
・安全性:管理不十分な生成AIアプリケーション(LLM Apps)が運用されることで、精度劣化の見落としや不要なLLM利用コストの発生など、ガバナンスを毀損するリスクがありました。
PoVにおけるDataRobot生成AIソリューションの成果
Nittoでは、生成AIの運用課題の解決を目指し、2024年の2月よりDataRobot 生成AIソリューションを活用したPoVを開始しました。
活用テーマと解決方法(PoVの成果)
LLMを社内文書向けにアップデートする場合は追加で学習を行う必要があります。
しかし、LLMの学習には大量のデータを必要とし加えて膨大な時間や費用が発生します。この課題を解決するために、RAGを用いたシステムの導入を検討しました。本件検討でDataRobotの生成AI機能が大きな助けとなりました。RAGの構築が迅速に行え、開発検討にかかる時間が大幅に削減でき効率的にシステム開発を進めることができました。さらに、DataRobotの生成AI機能は、様々なLLMを選択することができ、複数のLLMを比較検証することで、より高品質なシステムを構築することが可能となりました。
「近年の生成AIの進化は驚くべきものであり、その活用が期待されています。弊社では、モノづくりにおけるQCD(品質、コスト、納期)向上にDataRobotの活用展開を進めています。
生産本部 プロセス技術開発統括部 第3プロセス技術開発部 第2グループ長 木川 洋一氏は次のように述べています。
「DataRobotは、弊社の取り組みにおいて重要な役割を果たしています。特に品質向上に向けた要因解析では様々な部署での活用効果が確認されております。これらボトムアップの活動と、各部門の幹部を通じたトップダウンにより、積極活用の働きかけを行い全社的に推進展開が進んでおります。今回、検査装置取り扱い説明チャットボットの開発でDataRobotの生成AI機能を活用いたしました。DataRobotの生成AI機能の活用により要因解析だけでなく具体的なアクションを言語化し改善策を提案することができます。生成AIの進化とDataRobotの活用により、弊社のモノづくりは新たなステージに進出しました。これからも、技術の進化を取り入れながら、更なるQCDの向上を目指していきます。」
生産本部 プロセス技術開発統括部 第3プロセス技術開発部 第2グループ 主任研究員 加藤 康大氏は次のように述べています。
「DataRobotの生成AI機能はノーコードでRAGの構築が可能です。特に様々なLLMを選択でき、プレイグラウンド上で比較できる部分は他社にない機能だと思います。また、アプリ開発(Streamlit)の連携もスムーズに実装ができ、すぐに評価検証を進めることができます。これにより、開発工数を大幅に削減することができました。今後もDataRobotの新機能に期待したいと思います」
DataRobot 生成AIソリューションの本番運用による今後の展望
Nittoが業務効率化を実現するために、導入・運用を開始するDataRobot 生成AIソリューション及び支援プログラムは以下のとおりです。
・DataRobotの生成AI機能:高度な専門知識がなくても、簡単に生成AIアプリケーション(LLM Apps)の原型となるデータセットを生成することができます。
・ アプリケーションの作成:エンドツーエンドのアプリケーションを迅速に構築、実装することが可能となり、ビジネス関係者とエンドユーザーに生成AIを搭載したエクスペリエンスを提供することができます。
・DataRobotのLLMOps機能:予測AIで培ったMLOps知見を踏まえて構築された生成AI用のLLMOpsにより、高いガバナンスを実現することができます。
・生成AI活用の支援プログラム:専門家の支援を受けながら、生成AIアプリケーション(LLM Apps)開発を効率的に進めることができます。
Nittoでは、DataRobotの生成AI機能と支援プログラムを活用し、信頼性の高い生成AIアプリケーション(LLM Apps)の開発・運用を実現することで、新たな価値創造を目指しています。
Related posts
See other posts in 業界事例
複雑化する意思決定プロセスにおいて、適切なインサイトを迅速に得ることは、ビジネスリーダーにとって不可欠です。しかし、従来のアナリティクス手法や多忙を極めるデータチームの存在が、このプロセスを遅延させています。また、AI導入の現場では、長期にわたる実装サイクルやシステム統合の課題が、進捗を妨げています。 実際、AI導入の責任者の66%が、企業目標に沿ったAIソリューションを展開するための適切なツールが不足していると回答しています。特に、7ヶ月以上に及ぶ導入期間やシステム統合の困難さは、経営層の期待に応える上での大きな障壁となっています。 生成AIとAIエージェントは、これらの課題を解決する可能性を秘めていますが、導入は依然として容易ではありません。ビジネスリーダーの77%が、競争における後れを懸念し、チームに導入の加速を強く求めています。 この状況を打開するためには、より複雑なツールへの投資ではなく、即戦力となる構成済みのAIエージェントアプリケーションの導入が最も効果的です。


こんにちは、DataRobotデータサイエンティストの長野です。普段はDataRobotでデータサイエンティストとして製造業・ヘルスケア業界のお客様を担当しています。技術面では生成AIプロジェクトのリードを担当しています。本記事では、DataRobotのBYOLLM(Bring Your Own LLM)と呼ばれる仕組みを用いて、Hugging Face Hubから取得したLLMをDataRobot環境にホスティングする方法をご紹介します。