DataRobotでBusiness Developmentを担当している五十嵐です。
前回の、ビジネス・アナリストがAIの民主化を成功させるためにはでは過去データを元にしたBIとAIによる予測における意思決定の違いについて説明させて頂きました。会社の意思決定はあらゆる業務で連動しており、一つ一つの活動結果は会社全体に大きく影響を与えます。マーケティングの活動結果次第で、売り上げへの影響も大きく出ますし、販売計画に誤差があると、製造計画や物流・SCMにも大きな影響が発生します。
意思決定を行う際には、将来良くなる場合と悪くなる場合をそれぞれ想定して、最終的にどう判断すれば良いかといった考えを誰もが持たれると思います。そこで、今回はWhat-if分析を例に具体的に意思決定がどう変わってくるのかについて説明させて頂きます。
【目次】
- 従来のWhat-if分析における意思決定の課題
- AIを活用したWhat-if分析
- DataRobot新機能 What-If Extension for Tableau
1. 従来のWhat-if分析における意思決定の課題
What-if分析とは、何かを目的決定するとき、あり得るシナリオのシミュレーションを計算し、どのシナリオが一番いいかを考える手法です。具体的には過去実績を元にルールベースで数式を作成し、ExcelやBIツールなどでシミュレーションを行い比較します。シミュレーションした結果、将来のシナリオが
といった複数シナリオを立てて比較を行います。為替による原価シミュレーション、価格最適化、収益の最大化など様々なユースケースがあげられます。しかしながら、ExcelやBIツールでは、以下のような課題があります。
- 精度
将来の不確定な要因が多かったり、不確実性が高かったりする経営環境のシミュレーションを行うのであれば、考慮すべきリスク要因や未来のシナリオも多数となる。しかしながら全ての要素をルールベースで構築する事は困難なため、シナリオの精度が悪くなる。
- スピード
常に変化するビジネス状況に合わせてルールベースの計算ロジックを改編し続けるためには柔軟な対応が求めらるが、常にスピーディーに対応し続けるのは困難。
- ビジネス適用
ルールベースで決められたシナリオに基づいてアクションを取るため、ルールから外れたシナリオを考慮できない。
それでは、このような課題を解決するにはどうすれば良いでしょうか?
2. AIを活用したWhat if分析
上記で述べた3つの課題はAI(機械学習の自動化)を活用する事で解決できます。
- 精度
考慮すべきリスク要因のデータを取り込み予測モデルを再構築する事で、予測精度をあげる事ができる。
- スピード
ルールベースの計算ロジックではなく、AI(機械学習の自動化)により様々な要因となりえるデータを取り込みモデルを構築する事ができる。
- ビジネス適用
特徴量となり得る様々なデータを取り込む事により、説明可能な予測シナリオに基づいて、ビジネスユーザーが意思決定を行う事ができる。
AIによるWhat-if分析においては、意思決定の際に与えられた予測を元に判断するだけでなく、変数を変える事でビジネスユーザーが仮説を元により深い判断を下す事ができるようになります。
DataRobotで作成したモデルを元にした予測値をTableau ダッシュボードに組み込むと以下のような活用例が可能です。
【業務例:小売の出店予測】
客席数によって、会社の売り上げがどのように変わるのか?また、売上が最大化される条件はどこなのかをシミュレーションできます。
上の図では110席から120席がベストな売上である事が判断できます。
(130席から150席までは、席を増やすと売上が下がる事がわかります。これは限られた面積の中で、客席数(店舗面積)を増やす事により、逆に駐車場の面積が減る事が原因の一つとして考えられます。)
3. DataRobotで新機能 What-If Extension for Tableau
DataRobotでは、既にご説明させて頂きました通りTableau連携としてDataRobot insightをリリースしております。今月、リリースしたDataRobot What-If Extension for Tableauでは、DataRobotが構築した予測モデルを利用して、予測値のシミュレーションが可能になりました。
本ブログでは、Tableauとの技術的な連携方法については述べませんが、ビジネスとしてどう活用できるのかについて簡単に説明させていただきます。
What-if Extensionでは、Tableauを利用しているビジネスユーザーがDataRobotを予測値を元にシナリオを比較して意思決定を行う事が可能です。ユーザーはDataRobotでどのような予測モデルで構築されたのかを意識する事なく、普段使っているBIツールを元にAIで予測された最適な答えを得る事ができます。
例として、先ほどと同じ業務例でみて見たいと思います。
【業務例:小売の出店予測】
1店舗ごとの売り上げ予測を比較する場合、客席数、駐車場台数、接道数、視界性などを変更しシナリオ別に比較する
- 画面例としては、以下のように変数を変える事で予測値が変える事でシナリオを作成し、
- 設定されたシナリオの変数による売上予測を求めます。
- 変数を変える事で複数シナリオ毎の売上予測を比較する事が可能です。
上記の図のシナリオを見てみるとScenario 1の売上予測が一番大きくなる事がわかります。このシナリオですと、客席数100、駐車場55となっています。(客席数をこれ以上増やしても駐車場が減る事になるので、売上が下がると予測されています)
このようにWhat-if分析をAIで活用する事により、様々なユースケースにおいてビジネスユーザーが意思決定を行う際に、ビジネスインパクトにどう影響が起きるかのシナリオを比較する事が可能になります。
AIの民主化では、シチズン・データサイエンティストを増やすだけでなく、ビジネス・ユーザーがAIを元にした意思決定及びアクションができるかまで考える事が重要です。AI導入の際にはビジネスユーザーにどのように意思決定として役立てられるかを是非考えてみてください。
ご不明な気になる点やご興味のある部分などあれば、DataRobotまでご質問ください!!最後までお読み頂きましてありがとうございました。
本ブログ作成に関して、ご協力頂きましたCFDS中山 晴之さんにこの場をお借りして御礼申し上げます!!
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執筆者について
五十嵐 恒(Hisashi Igarashi)
チャネルパートナーディレクター
DataRobot では新規パートナーのビジネス立ち上げなどビジネス・デベロップメントおよび既存代理店とのビジネス協業、Technology Partnerやコンサルティングファームとのアライアンスを担当。マーケティングによるパートナーリードの獲得、パートナー AI 人材育成のためのトレーニング企画および日本主導での認定制度推進。前職(Oracle/Qlik/IBM/Cognos)でもAnalytics 製品の BD/営業として製品横断したソリューションの企画/提案活動を実施。
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